Cotswolds

イギリスで一番美しい田舎と言われているCotswolds(コッツウォルズ)に、日本から出張で来ていたF氏と遊びにいってきました。オックスフォードが近くにあるのですが、ロンドンのど真ん中にあるLSEの環境とは本当に全く違いますね。

ウィンストン・チャーチルの生まれ育った大宮殿:


◆その近くのカフェ:

◆村落の中心を流れる川:

久々に頭をゼロリセットしてリフレッシュできました。一人では絶対に来なかっただろうし、非常に良い機会でした。更に今週は水曜からものすごく寒くなるらしいので、今年最後(?)の暖かい日差しの中で旧友に再会して遊びにいけたのは良かったですね。

「学生」になるということ

今日は朝10時から20時半まで、ほぼ図書館に篭もって勉強していました。トータル9時間強くらい勉強したかな。結構やることが多いので、タスク・リストとスケジュールを作って回しています。とはいえ、回すだけでなく、しっかり纏めて振り返る時間も作らないと・・。土曜日の午前中にやろうかなと思っています。

今週は土曜日に日本から友人が来るので、夜飲みに行って、日曜日はCotswoldsという湖水地方瀟洒な村落に遊びに行ってきます。観光らしい観光って、実はまだしていないから、とても楽しみ。親友に会えるのも、もちろんね。

この友人とは大学時代に出会って、NPO法人(PPIという非営利シンクタンクです)の立ち上げ初期から一緒にやってきた仲間なのですが、それから既に10年以上・・。もうそんなに経っているんですね・・。

これまで本当に色んな人に出会ってきましたが、PPIの仲間ほど優秀で個性的な友人たちは、結局日本では出会うことがなかったというくらい。もちろん、職場の仲間やクライアントの中にも、そういう志レベルで共鳴できる超優秀な方々が多くいらっしゃったのですが、PPIほど密度の高い場も無かったなぁと。これは某元県知事氏も、同じように仰っていました。

個人的にも、そもそも留学後に日本に帰りたいと思う理由・前提の大きな部分をPPIという場に対する期待感が占めているということは、本当にそうだと思います。期待感と書いたのは、PPIがいわゆる相互依存の要素が全くなく、純粋に創発共奏の前提で動いている稀有なネットワーク型シンクタンクであって、それがゆえに日本が直面する色々な社会問題解決に向けたブレークスルーになり得る可能性を常にもっているからです。

将棋でいえば、八方ふさがりの状況を打開する桂馬みたいなポジショニングなのかもしれません。飛車・角ほど強力じゃないし、金・銀ほど保守的じゃない。しかし守るところはしっかり守れて、これまでにない打開策の先兵になれる。そんなイメージです。

PPIが機能してきたのは、今週末に渡英する友人が粉骨砕身して要を守ってきたことが非常に大きいのですが、一方には、PPIに参加している個々人が共通して潜在的に抱えてきた問題の性質もあるんだろうと考えています。(PPIのメンバーには個人事業主、地方議員、コンサルタントシンクタンク研究員、霞ヶ関住人、記者、バンカーなど通常の業種よりも個人の裁量・責任で動いている人がとても多い)

こういう職種の人間って、あるレベルになると一匹狼的に仕事をせざるを得ないことも多いので、かなり孤独になって視野狭窄に陥りがちになるんですが、そういう時に根源的な思想・価値観レベルで共感できる「付き合いの長い友人たち」がいるかどうかって本当にクリティカルな分岐なんです。特に20代のうちなんかは。

更に、こういうことが身に染みて分かっていると、特に仕事上の人間関係には非常に気をつけるようになります。なかなか実感しにくいとは思いますが、一匹狼たちの暗黙的な処世術みたいなものがあって、それを実践的に理解していない駆け出しの一匹狼は本当に痛い目をみるわけです。

たとえば一匹狼はいわゆる大企業なんかの組織とは違って、いつでも逃亡(持ち逃げ・裏切り・背信)することができるので、特に一匹狼同士で公の関係(協業・パートナーシップ)を結ぶのって本当にリスクが大きいことなのです。中には逃亡でもって生き延びてきている百戦錬磨の一匹狼さんもいらっしゃるので、かなり気をつけていないといけません。

一匹狼的な仕事って、コンサルの他にも、たとえば企業経営者や弁護士・会計士、通訳、ボディーガード、探偵、開業医・専門医、俳優・タレント、アーティスト、記者・編集者とか、本当にたくさんあるのですが、そういう職種の人々と付き合う上で気をつけなければならないのは、その彼・彼女に10年以上継続している同業ネットワークがあるかどうかという点と、そのネットワークの質。だいたい、殆どこれで判断できると言って良いと思っています。

繰り返しますが、「その人に10年継続している公的なネットワークがあるかどうか」って、物事を進める意思決定をする上で、ものすごく重要です。そして、振り返ってみると、そういう種類のリスクからの避難所や緊急ピットとしても、PPIは機能していたなぁと思うわけです。

まぁ、私も20代のうちは結構痛い目にもあいましたしね・・。泣 今でも、まだまだ脇が甘いなと自戒することも多いのですが・・。しかしPPIのおかげもあり、一度信頼した仲間は本当に信頼できるという自信も持てるようになりました。

(なんだか自己啓発セミナーの告知文っぽくなってきましたね・・。苦笑)


とはいえ、今はそういうことを一切気にする必要もないので、世界中から来た同期たちとの付き合いを心から楽しんでいます。これも、この年で"学生"になるということの一つの価値なのかなと。そんなことを大学からの帰り道に考えていました。

一方で、学生ボケしないよう、そういうリスク感覚や基本的な護身術は自覚して覚えておかないといけませんね・・。

LSE Public Lec: 拡張する自己

昨日はヨーロッパの市民セクターに関する調査でロンドンに出張中の古い友人と、彼の研究パートナーの方がLSEまで訪ねてきてくれました。"友人"というのもおこがましくて、昔からお世話になりっぱなしの方なのですが、なにより久しぶりにお会いできたのが嬉しかったのです。

カフェテリアでBig SocietyやPPPに関するお話を伺った後、大学のPublic Lectureにご招待して、次のようなテーマの講演に参加してきました。

Date: Monday 10 October 2011
Speaker: Professor Katalin Farkas

Our iPhones, diaries, computers or collaborators are extensions of our minds, according to a philosophical argument. This lecture investigates the significance of this claim in our understanding of the notion of a self.

ちょうどお二人の関心テーマが、「IT技術を用いて行政・企業・市民セクターの協働・創発を促進する方法」であったので、ちょうど良い内容でした。

私自身は、お二人ほどこのテーマに関しては詳しくない(なにしろ電子行政関連のタスクフォースに入っている方なので・・)のですが、非常に興味をそそられる内容でしたので、備忘録的に少しまとめておこうと思います。

さて、以下は講演の中で出てきた3つの問いです。

  1. 交通事故で短期記憶能力を失ったオットーは、全ての予定や知人の名前を手帳に書き付けて管理している。
  2. 心理学部に通う富豪令嬢ロッテは、いつでも解答を教示してくれる心理学者を雇って学期末試験に臨んだ。
  3. 30代主婦のインガは、問題が起きると常に、思慮深く慎重な性格のに相談し、そのアドバイス通りに行動している。

1のオットーは「記憶」を脳の外にストレージしている。2のロッテは「記憶」とともに「知的機能」を。更に3のインガは「記憶」と「知的機能」に加えて「価値観・スタンス」までをも自らの脳の外にアウトソースしているという例です。

元来、「自己」を形成している様々な要素の多くは脳に蓄積され機能していたわけですが、それを脳の外でストックしたり機能させたりする割合が近年非常に大きくなっている。たとえばスマートフォンなんかを使い始めると、いちいち予定や文書の中身は記憶しておかずに、必要に応じて検索ボタンを押すだけになる。

もう少し酷くなると、せっかくみんなで議論しているのにスマートフォンで他人のブログを出してきて参照コメントばかり出すようになる。

こういった"Extended Self (拡張する自己)" というトレンドが、21世紀のヨーロッパ哲学界において、いま注目されているらしいのです。インターネットの登場によって現在も指数関数的に増大しつつある「ものすごい量の情報」を前にして、人間がいったい何を自分の脳の中に置いておくべきで、いったい何をどこまで外にアウトソースして"良い"のか。

このLectureを聞いていて感じたのは、いま成功しているソーシャルメディアを含む新しい形の情報・知識流通プラットフォームは、すべからくこの価値階層を踏んでいるなぁということです。

例えばTwitterFacebookをこの階層的枠組みの中で評価すれば、いわゆる旧来型のネット検索エンジンとは異なり、未だネット上に情報としては掲載されていない、他者の脳の中にある記憶・知的機能・価値観なんかを収集できるツールとして位置づけることもできるわけです。

人間はどうしたって何かに依存する生き物なので、その依存する内容が根源的なものであればあるほど、その方法を示唆されて学習してしまえば、簡単にそれに従ってしまうものです。

政治学では、特に個人としての意思決定がどのように集団としての決定に反映されるかという問題にフォーカスして学んでいますが、逆に集団・プラットフォームの仕組みがいかに個人の自己形成を規定するのかという問題も面白いなと思いました。

最後に、この先生が掲げた問いが、なかなか秀逸でしたので挙げておきます。

"Are they Extending the self or Diminishing the self?"

自己の拡張とは、自己の消失なのか? 自己の拡張と消失は正比例の関係にあるのか、もしくは拡張の先に新しい形の自己形成があるのか。ちょっと面白いテーマですよね。

生活メモ (炊事編)

この頃、日曜日の午後はカレーを大量に作って平日のお昼ご飯にしているのですが、自分でも驚くほど本格派のレシピができあがりつつあるので、備忘録的な意味も込めて書いておこうと思います。

  • チキンカレー

  • ポテトとひき肉のドライカレー

※チキンカレーの場合:

    • 鶏肉(好きな部位)400g
    • カッテージトマト缶 1缶

※ドライカレーの場合:

    • じゃがいも 400g
    • ひき肉(あいびき)400g
  • 作り方(1時間弱)
    1. まず、鍋にオリーブオイルをひいてホール・スパイスをいためる。
    2. 香りが立ってきたらニンニクのみじん切りと赤唐辛子を投入する。
    3. にんにくが色着いたら玉ねぎのみじん切りを入れ、あめ色になるまでいためる。
    4. 玉ねぎの香りが立って、よく色ついたらカレー粉をいれてまぜあわせる。

※チキンカレーの場合:

    • カッテージトマトを投入し、水気が飛ぶまでいためる。
    • 鶏肉を一口大に切ってから鍋に投入し、少し水を入れて煮詰める。
    • 煮詰まってきたらガラムマサラを投入し、もう一煮立ちさせる。
    • 塩で味を調える。

※ドライカレーの場合:

    • ひき肉を投入し、よくいためる。
    • 一口大に切ったじゃがいもを投入し、よく火が通るまで弱火で蒸らす。
    • 煮詰まってきたらガラムマサラを投入し、もう一度よく混ぜ合わせる。
    • 塩で味を調える。

玉ねぎはみじん切りにしてから電子レンジで15分くらい火を入れると、あめ色になるまでの時間が早くなります。それから、カレーは煮詰める前に塩を入れると、煮詰めた後に塩が強すぎることがあるので、仕上げの直前に入れて調整します。

味の決め手は、とにかく玉ねぎをたくさん使って飴色に美味しく仕上げることと、最初にホール・スパイス・最後にガラム・マサラを使うことです。いわゆる缶や瓶に入った粉末状のカレー粉だけではスパイスの香りの層が薄くなってしまいます。

つまり、玉ねぎで旨味のベースを、ホール・スパイスで香りのベースを作ることが最も重要なようです。その上に何を乗っけるかで料理としての全体像も変わってきますが、とにかくベースがしっかりしていると何を乗っけても美味しくなります。

今度、LSE同期のインド人の奥様に、キーマカレーの作り方を教わりに行ってきます。カレーは留学中に極めたいスキルの一つですね。

なんで"政治"は、こんなにもどかしいのか

  • なんで、こんなに民意とかけ離れた政治が横行しているんだろう?
  • 問題を解決できないのは、能力とやる気が不足しているからではないか?
  • 特定の団体の利益ばかり重視して、歪んだ補助金や規制が導入されている。

「政治」によって社会の望まない選択や不平等・不公正をもたらす意思決定がなされるのを見る時、市民は政治に幻滅し、政治的なもの一切からの逃避を始めます。政治への無関心や、時に「政治が悪い」ことを理由にしたモラル・ハザード(投票棄権、徴税回避)など。

しかし、そもそも上述した問題の発生しない民主主義的な意思決定メカニズムなど「理論的に」存在し得ないとしたら?

例えば、7人の有権者がある政策について5つの選択肢を優先順位付けして投票する場合、それら有権者の理論的な総意とは異なる結果(優先順位)が選挙結果で示される確率は21.5%にも上る。

これはCondorcet's Paradoxとして知られ、投票者と選択肢の数が増えれば増えるほど、誤謬が発生する確率は高くなります。しかし、ここで最も重要なことは、「そもそもそういった誤謬が発生することを理解して気をつけていれば、そんな単純な間違いは避けることができるのでは?」という我々の考えは完全に誤りであるということです。

1972年にノーベル経済学賞を受賞した論文 "Social Choice and Individual Values" (Kenneth Arrow, 1963)によると、以下のような単純な条件を全て同時に担保しつつ、個々人の選好を合理的に統合するような意思決定のメカニズムは「理論的に」存在し得ないことが明らかになっています。

  1. 全ての有権者が独自の選好に基づいて、選択肢間の優先順位付けをしている
  2. 有権者が選択肢AよりもBを好むなら、集団としての選好も同様になる
  3. 有権者の選好・優先順位が変化しないなら、集団としての選好も変化しない
  4. 有権者の選好は相互に独立しており、且つ均等に扱われる

たとえば1〜3の条件を満たす集団的意思決定メカニズムは必ず4を満たさない。つまり独裁制か、もしくはメカニズムが全く機能しない状況に陥っているか、どちらかであるということを証明しています。

これは政治家の質の問題や、直接民主主義や間接民主主義といった方法論の問題をはるかに超え、そもそも個々人の選好を統合して集団としての意思決定を行おうとする政治的メカニズムが内包する問題として認識しておく必要があるということです。

ここで注意しなければならないのは、①民主主義を否定して独裁政治を導いてしまうことと、政治的無関心に陥って悪意ある第三者に操作されてしまうこと

民主主義的な意思決定メカニズムがその根本にエラーを内包しているということは、要するに、少数の個によって意図的・戦略的に、社会の望まない選択や不平等・不公正をもたらす意思決定を引き起こされてしまう可能性があるということの裏返しでもあるわけです。

民主主義における"政治"は、傍から見ていて本当にもどかしい。しかし、そのもどかしさに駆られて独裁制をもたらす非本質的な方法論(首相公選制など)に依存しようとしてみたり、全くの政治的無関心へと逃避したりしてはならない。

むしろ、政治的な意思決定メカニズムに依存しないオルタナティブを探し続けることこそが自由主義社会に生きる市民の役割ではないか。

レクチャーの纏めも兼ねて、つらつら考えたことを纏めてみました。

LSE Public Lecture

LSEでは、毎晩のようにPublic Lectureといって、世界中の著名な政治家や有識者が集まって講演をしたりディベートをしたりする場が用意されています。中にはクラシック音楽家がコンサートを開くプログラムなんかもあったりして、無料で参加できる身分としては非常にありがたい機会です。

今週水曜夜は、リオ・デジャネイロ州知事とインド国会議員、オックスフォード大のエコノミストバークレー教授の4人が「都市と経済政策」についてパネル・ディスカッションをするというので、環境省から来ている同期と2人で参加してきました。

ブラジルやインドという、どちらかというと発展途上にある国の地域社会・経済政策についての議論が多かったので、あまり日本に応用できる内容は多くなかったのですが、興味深かったのは彼の国々においても中央集権⇔地方分権(Convergence ⇔ Divergence)というトピックが大きな政治的価値観の対立になっているということ。

それからPPP(Public Private Partnership)や国家ブランディング(Nation Branding)という新しいイニシアチブも、それらが念頭においている課題の種類こそ違え、世界的な潮流としてまさにいま生まれつつあるということ。

まぁ、いろいろと議論はしていましたが、結局気になったのは「行政が単独で産業振興計画を云々すると、東西や先進国・途上国問わず、地に足のつかない絵空事になりがち」であり、そもそも行政が事業リスクを取るわけでもないのに、一方で地域単位の産業政策を計画できる主体も行政以外にみあたらないというジレンマをどうするのかということでした。(リオ州知事は拡大版"Minha Casa Minha Vida"構想を打出していました)


短期的な目標としては、毎週一回はこのPublic Lectureに参加すること。
長期的には、いつか自分もこの場でLectureできるようになること。笑

LSE 1st Week

怒涛の1週間目がようやく終了しました。
最初の2週間はPre-Sessionalコースということで、まずは大学院への公式登録やら諸々の仕組みの説明やらをするのですが、本格的なプログラムが始まる前に計量経済・政策分析の基本となる数学・統計をざっと復習するコースが用意されています。

自分の振り返りのためにも念のため内容をメモしておくと・・。


◆数学

  1. Linear functions [線形代数]
  2. Non-Linear functions [非線形代数]
  3. Logarithms [対数]
  4. Exponential functions [指数関数]
  5. Differentiation [微分]
  6. Unconstrained Optimization [制約なし最適化]
  7. Functions of multi-variables [多変量解析関数]
  8. Constrained Optimization [制約下の最適化]
  9. The Lagrangean function [ラグランジェ関数]

◆統計

  1. basics [変数,平均,分散,共分散,相関,カイ自乗分布]


内容的には高校・大学のおさらいなので、殆どが記憶を戻していくだけで対応できるのですが、やはりこれをものすごいスピードで英語でやられると脳がオーバーヒートしそうになりますね。同期の中には、大学まで歴史学しかやっていないという人もいて、完全に死んでいました。(来週の月〜水は統計を集中的に振り返ります)

ということで、講義終了後は図書館のStudy Roomに同期数人と集まって予復習をみっちり。課題がたくさん出て、講義以外にも毎日ワークショップ形式の時間もあるので、その事前対策をやっていました。

とはいえCobb Douglas(生産関数)とか、懐かしい経済モデルを数式から復習しながら簡単なモデルを回してみていると、10年前には見えなかった発見がいろいろあって、なかなか楽しいものでした。

本格的なプログラムが始まると、こういう数学・統計は基本の基本として扱いながら大量のテキスト・論文を読み下していくことになるので、今のうちにしっかり復習しておく必要があるようです。