酔っ払いと格闘

素晴らしいワークショップの後、オフィスに帰って暫く仕事をしてからPPI関連の会食に行き、10時半頃に電車で目白駅まで帰ってきました。恵比寿からD通のM中さんと内回りの山手線に乗ってきたのですが、1人で駅に降りると、同じ電車の違う車両から酔っ払いが降りてきました。

なにか面白くないことがあったらしく、「このやろー」とか「ふざけんな!!」とか叫びながら電車や駅の器物をすごい勢いで蹴り飛ばしています。尋常でない騒ぎようで、近くにいた女性に嫌がらせを始めています。

これは早めに捕まえた方がいいなと、駅員に通報してから、酔っぱらい氏が他人に暴行を加える前に取り押さえようと近くで見守っていました。相変わらず周囲に怒鳴り散らしたり、モノにあたったりと目もあてられない状況です。きっと不景気のあおりを受けてリストラにあったのでしょう。

ああ、きっと可哀想な人なんだと思っていたところ、ようやく改札から外に出ようとしています。すぐ駅前には交番があるので、彼が改札を出たら少し強引にでも連れて行ってあげようと見守っていたところ、彼の定期 or Suicaに問題があったのか、彼は改札機に阻まれてしまいました。

そのことに腹を立てた酔っ払い氏と私の目がちょうど合ったのが原因なのかどうか、なんと彼はそれまで以上に怒り心頭に達し、私に向って突進してきたわけです。今度は「オレが悪いんじゃねー!!」と叫んでいます。やっぱり、リストラの憂き目にあってしまったのかもしれません。

しかし、なんて可哀想な人だろうと、彼の攻撃をかわしながら思うわけです。何があったのかは知る由もないけれど、こんなに狂ってしまっている。「ふざけんなー!!」とか叫んでいる。殆ど声にもなってない。何が彼をここまで追いつめているのか。

見たところは30代中盤のサラリーマン。身なりはそんなに悪くない。左手の結婚指輪がくすんでいないのを見ると、新婚なのかもしれない。ただ、目は完全にいってしまっている。

次の攻撃を受けてから地面に抑えこもうと身構えたところに、駅前の交番のD口巡査部長が登場。慣れたもので、酔っぱらい氏を交番まで連行していく。事情を聞きたいからと、私にも同行を依頼される。もちろん、断る理由はない。

ただ、交番に入った瞬間、動揺の極致に達した酔っぱらい氏がこんな主張を始める。
曰く、「こいつ(私)が、電車の中で痴漢をしていたのをオレが捕まえて連れてきてやったんだ!」と。


えぇー勘弁してよ。なに言ってるのこの人??

「悪いのはこいつだぁー!! こいつが痴漢なんだ!!」となりふり構わず叫びだす酔っぱらい氏。当然、交番前には野次馬の人だかり。


うわー。これは想定外だ。

そこにパトカー登場。(警察用語ではピーシーと呼ぶらしい) 酔っぱらい氏は、そのままパトカーに乗せられて近くの警察署まで。行きがかり上しょうがなく、私もD口巡査部長とともに、徒歩で警察署まで事情聴衆に連れて行かれる。それにしても、野次馬の前に晒された私の名誉は回復されるのだろうか???苦笑

着いたところで、S野警部補から20分ほど経緯について様々聞かれる。S野警部補曰く、酔っぱらい氏は取調室に入って以降、大声で泣きながら謝っているらしい。どこまでも迷惑な男だ。上司と奥さんが呼ばれて、身柄を引き受けに来るらしい。その上司も、金曜の夜に本当に可哀想な話だ。

しかし、リストラでないとしたら、いったい彼は何に憤っていたのだろう?

次の日、土曜出勤の用意をしていると、目白警察署から電話がかかってくる。酔っぱらい氏が、どうしても私に謝罪をして許してもらいたいらしい。正直、貴重な時間を割いてまで関わりたくないというのが本音なのですが、どうも一応私に対して暴行行為をはたらいたということで、被害者から「許してあげます」の一言が必要らしい。

しかし一方で気になるのは、何が彼をあそこまで追いつめたのかという事実。
今週末、また目白警察署まで来るらしいので、それだけ教えてもらって帰ってこようかと思います。