中:東京の新しい物語とは

先日、「世界第2位の経済大国の中心都市」が、その前提から崩れ落ちてしまいました。

経済の規模という点で、今後中国と伍していく可能性、つまり過去のフィクション復活はあり得ないように思います。また、そんなことに心血を注ぐ意味もないでしょう。要するに、そうではないフィクション。それも東京固有の可能性と魅力をもった物語が必要なのでしょう。

良い物語は、常にターゲットが明確で分かりやすい。例えば、映画人が目指すのはハリウッドで、ファッション・デザイナーならミラノ。ソムリエはとりあえずフランスでしょう。時計職人ならバーゼルでしょうし、ロビイストはワシントンでしょうか。それくらいの解像度でターゲットを設定して、東京を再設計する必要があるような気がします。

世界中のTVゲーマーやアニメファンというのも、もちろんその一部でしょうし、日本料理を修業する人々や、美理容業のプロフェッショナル達も対象になるかもしれない。日本の高度医療を、海外の医師や薬剤師、看護師が研修医として学ぶというのも良さそうです。世界中の自治体職員が、日本の素晴らしい自治の体制・方法論を学びに来るというのでも良い。

メガトレンドとしてのグローバリゼーションの一方で、本当に「価値」をもたらす源泉はローカルにしか存在しないということの意味も、世界中で共有されはじめています。その地域にしかない技術・料理・建築・音楽・演劇・風土・コミュニティなど、固有であればあるほど、その価値を共有する人が多ければ多いほど、都市としての実力・魅力は高まります。

スウェーデンヨーテボリ市は、ボルボエリクソンといった著名な企業によって生み出される価値から、そういったローカルなコミュニティとして自生する価値へと、その都市の社会・経済の方向性を移行することに成功しつつある事例として有名なのだそうです。旧来型の町興し・村興しではなく、グローバリゼーションの文脈の中で都市を再定義する動きが始まっているようです。