東京が進むべき道とは

これは国連統計局の調査(2007年)です。「都市的集積地域」ということで、実際の行政区分上での人口ではありませんが、いかに東京が群を抜いた都市であるかが分かります。

域内GDP(2006年)でも、東京都は92.3兆円と、オーストラリアやオランダ、スイスを上回ります。さらに、東京都庁の財政規模(12.4兆円:2009年、特会も含む)は、カナダの国家予算(15.1兆円:2006年)に匹敵します。カナダの人口が東京都民の3倍程度であること、且つ東京都予算には外交安保等の予算負担が無いことを鑑みても、こんなに大規模な「自治体」もないわけです。

次は、定性的な側面も見てみましょう。



NHK放送文化研究所が1996年に行った調査を見ると、日本人の思う「日本を代表する都市」とは、東京と京阪神の2極に集中していることが分かります。(上図は「自県以外で最も親しみを感じる都道府県は?」という調査の結果を図示したもの) もし同じ調査を他の先進国でやったらどうなるか。間違いなく、こんなに集中することはないでしょう。先進国の首都として、これだけ「認められている」都市も稀というわけです。


このように、東京は日本の社会と経済を代表し、名実ともに「首都」として機能してきたと言えます。


しかし、それも既に過去の話です。東京は、特に国際都市として、全く機能できなくなっているのです。

例えば、オランダのデルフト工科大、スイスのIMD、カナダのブリティッシュ・コロンビア大やモントリオール大。東京都が作った首都大学東京が、それらに比肩する大学となり得るための道筋は殆ど見えていません。東京都庁は、それらの国を上回る予算をもっていながら、です。

東京モーターショーは、既に世界3大モーターショーの座を上海に奪われてしまっていますし、主要な通信社や新聞・雑誌社は過去10年で東京駐在記者を3分の1に減らして、その分を中国に異動させている。国際的な発信力が急速に衰えつつあるということです。

ファイザー、GSK、ノバルティスといったメガ・ファーマも、アジアの研究開発拠点を東京(筑波)から上海に移してしまいました。今や、人件費だけでなく、人材の質でさえ、東京は上海に劣るという判断がされているということです。


GDPベースで日本全体の37.2%を占める東京が、日本を牽引する責任を果たしていない。つまり、これは東京都だけの問題ではなく、日本全体の問題であって、過去15年間の日本社会・経済沈滞の原因が東京にあるといっても過言では無いと思うのです。


東京が進むべき道とは何か。猪瀬副知事のように、公金を使って民間企業の事業リスクをとるような意味不明な道で無いことは明らかだ。「東京都が日本の成長戦略を担う!」という問題意識は理解するが、政府としての支援・関わり方を考えるべき。おじいちゃんたちの「坂の上の雲」のために、これ以上、新銀行東京のような失敗を積み増さないで欲しい。

東京は、日本に残された最後で最大の可能性と言っていい。東京を再生できるかどうか。そのプランを出せるかどうか。それが我々自身の未来をも決定すると思っています。