気象予報士とコンサルタント

どちらも複雑系の事象を扱い、且つ未来予測をした上で対策プランを練らなければならないという意味で多くの共通項があります。しかし前者が完全にScienceに立脚しているのに対して、後者はかなりの部分でArtに依存している。そう感じることがあります。特にMarketing / Communicationの領域では「常に」と言って良い。

もちろん、その戦略の仮説は実行に移される前に必ず何らかの検証プロセスを経る。そこでは当然Scienceの裏書きも得るわけですが、そもそも、その仮説に至った背景には直観や洞察、美意識や信念といった神秘的なものが色濃く存在することが多いように感じています。

そして、そういった神秘性に立脚し、ウルトラCを繰り広げて市場のニーズを掘り起こす。そんな努力を自ら/同僚が毎日のように繰り広げているのを見ていると、時々「シャーマンのようだ」と微笑んでしまいます。八百万の神々に加持祈祷して、そのうちの幾つかの神が動き出すと社会に波が現れる。その波に乗って製品だったりサービスだったり政策だったりが売れてゆく。もしくは競合が仕掛けた波を打ち消すための防波堤や対抗波を設計したりする。

百万人を動員して一つの潮流を生み出すこともあれば、大陸棚で地震を起こして大がかりな津波を起こすこともある。西高東低の気圧配置を仕掛けて日本海側に大雪を降らせる計画も立てれば、北京に蝶を放ってニューヨークで嵐を吹き荒らせることもできる。まさにシャーマンの世界だ。

シャーマン達の合言葉は「未来は予測するより創造した方が早い」ということだし、一人前と呼ばれるシャーマンはその経験と自信を十全に抱いています。しかし古の加持祈祷師が気象衛星と百葉箱の出現によって消え去ったように、Artを背骨に貫いたコンサルタントも早晩失職してしまうでしょう。もちろん我々の戦略体系や手法論は、シャーマンのそれより遥かに高い信頼性を持つものだと自負はしています。しかし、それは所詮、程度の差でしか無い。

ただし、単なる気象画像と気温・湿度・気圧データだけでは気象予報はできない。過去の経験やデータに基づくシミュレーションが加わって、初めて明日の気象変化を予報することができる。更には、その予報に基づいてアドバイスができる。我々も、その地平を目指さなければならない。

自ら気象をコントロールする手法は持ち続けなければならない一方、その経験をもって我々は明日の気象予報を始めなければならないのではないか。まずは気象衛星と百葉箱を手に入れなければならない。コンサルタントにとって、それが何を指すか。ちょっと気の利く人なら既に気付いているだろう。

未来はすぐ目の前にある。そこに一歩を踏み出せば世界の天気が変わるだろう。