政治家オバマの手腕

"This election is for the past versus the future."


オバマ大統領の勝利演説は圧巻の一言。

そのメッセージ性と戦略性。非常によく練られた演説であることは間違いありません。今回の演説における彼の目的は明確に絞られており、それが大きく聴衆の心を動かしていました。

彼の目的は1つ。

オバマが大統領に選ばれた理由とは何か」という社会的コンセンサスを早い段階で定めること。そして選挙結果の背景に存在する国民の声・要望に対し、自らに有利な定義・意味づけをクイックに行うこと。

政権運営の方向性を規定する世論・社会のコンセンサスを自ら掌握できれば、当然のことながら、そのパワーは非常に強力なものとなります。

「国民は●●を望んだからこそ、私を大統領にしたのだ」

これを言える政治家が最も強い。本当に強い。殆ど無敵と言っていい。

無敵の大統領へと羽化するには、今後の移行期間の組み立てが最も重要となります。つまり、これまで批判する立場にあった彼が、これからは常に批判を受ける立場へと移行するということ。この移行に失敗すると、結構ひどい目に合うこととなります。

移行に際しては、なによりも言動の整合性・一貫性が求められるでしょう。大衆政治家としては、その移行をスムーズ且つ有利に行わなければならないし、敵が付け入る最初のスキは、まさにその移行段階にあると言えます。

ただ勝利演説を聴いている限り、政治家オバマは、その最初の難関をスキなくクリアするでしょう。そしてオバマ大統領の下、アメリカは"Change"に向けて大きく前進するはずです。金融危機、医療問題、雇用・労働問題など、彼の挙げた政治課題の解決に向け、暫くは内政に注力して改革を進めていくでしょう。

難しい危機の局面にあるとはいえ、強いリーダーの復活したアメリカが幾分うらやましく見えてきます。問題があっても、それを乗り越える自信があるか否か、自信を与えられるか否かが、危機に直面したリーダーたる大統領の本質的な資質・手腕なのでしょう。