マス・マーケティングの埋没

業界的には非常に有名な統計。10年ごとに総務省「情報流通センサス調査」というレポートを発表していますが、上のグラフはH17年の調査結果です。何がスゴイかと言うと、選択可能な情報量が10年間で爆発的に増加し、消費可能な情報量の410倍にも達したというポイントです。

つまりH7年には、消費者が1日に接する情報量と消費可能な情報量がほぼ同一であったのに対し、H17年にはその開きが410倍にもなったということです。これは直感的にも正しいように感じています。(この頃はCCで入ってくるメールには殆ど目を通さなくなりました)

しかし、企業のマーケターの立場から見ると、広告等のPush型コミュニケーション施策の効果が10年前と比して1/410になってしまったということで、これは本当に大変な出来事です。せっかく高い費用を支払って打ち出した広告が、顧客に到達はするものの消費はされない。MARCOMの存在意義を問われるような問題であると言えます。

それにともない、今後、既存の広告代理店やメディアを含めたコミュニケーション関連ビジネスは、その依って立つ事業モデルを大きく変革することが喫緊の課題となります。

今、マス・マーケティングがその効力を激減させる中、IMCやコミュニケーション・デザインなど様々なバズワードが跋扈しています。今のところ次のパラダイムを示すものは出てきていないという印象ですが、個人的には本業界でも短期的に大がかりな世代交代が起きるように見ています。

事例を示せば、資生堂の圧倒的なTVCM展開は徐々に効果を減衰させてゆき、Roots(缶コーヒー:坂口憲二の看板広告)のようなコンセプトが大勢を占めてゆくのでしょう。「マス」が既に幻想であるとするならば、その環境下で目標を達成するための戦略とは何か。

それを敏感に嗅ぎとれるかどうかが、今後の世界をリードできるか否かの分水嶺であると言っても過言ではないように思います。