オバマ後の世界とは

IMFの調査によると、先進16カ国の国民総資産総額における海外保有分は過去10年で4倍となり、その平均総額はGDPの4倍にも及ぶ。カップリングどころではない。巨大なマネーが動き、実体経済とはかけ離れたところで金融市場が乱高下する。その煽りを受けて実体経済が大きなダメージを被る。本来シッポであった金融が、本体である実物経済を振り回しまくっている。

CDSの動きを見ていると、日本の保険やノンバンク系は相当あぶなそうだ。年末から年明けにかけて、いくつか大きなところが飛ぶ可能性が高い。特にみずほ等はかなり大変な状況にある。崖っぷちのライ麦畑で走り回っているような感じ。日経平均が6,000円台ってモノすごい。

しかしこの実体経済と金融との乖離について、今さら良し悪しを議論することは賢明ではない。これはそういうゲームであって、それに参加しないことは、一国の選択肢としては現実的な議論ではない。

むしろ注目すべきは今回の金融危機の発端となった米国である。つまり、誰も米国が単独で今回の金融危機を解決できるとは考えていないという点だ。世界は米国の単独覇権レジームの崩壊を横目で見つつ、次なる支配者を模索しているし、米国民も概ね大政奉還の流れに賛同しているように見える。ドルの次はユーロか、元か、それとも円か。(そういえばアラブの通貨ってなんだっけ?)

その辺りは、今回の金融危機の収束後に少しずつ見えてくるのだろう。しかしそこに至るには、まだまだ多くの時間が必要だ。そもそも、根本にあるサブプライム等の不良債権処理に未だ殆ど手をつけることができていない状況だし、各国中央銀行は資金の流動性確保に躍起で、事態の悪化を食い止めるのに手一杯な状態。収束に向かうのは次の次くらいのフェーズまで待たなければならない。それには少なくとも2年以上の期間が必要だろう。

事態打開のウルトラCは無い。着実な問題解決に世界全体で取り組んでいくべき時で、国内産業を守る名目での関税引き上げや市場封鎖は行うべきでない。市場経済以前の世界、つまり武力を用いた収奪が横行することになりかねない。

来週にせまる米国の大統領選挙。このまま何もなければオバマ大統領の登場は間違いないだろう。しかし現在のような状況下で、自ら進んで舵取りをしようというのは本当に大変な決意と思う。そして、その舵取りの方向性は近日中に明らかにされるだろう。

オバマ後の世界がどうなるかについては、まだ何とも不明瞭だ。彼は外交的には融和路線であるとされるが、その実態はどのようになるか。彼が世界の大統領として、この危機をハンドリングできるかどうかによって、今後の世界地図の動静を見極めることができるかもしれない。